テーマ概要
結晶構造として考えられる候補は無数に存在する一方、それらの中で現実世界に存在可能なものはエネルギー的に安定なものに限られる。
そのため、新材料探索においては多様な結晶構造間のエネルギーの序列を精度良く再現することが求められる。従来は電子状態計算が使われてきたが、計算コストに律速され大規模なスクリーニングのような用途での活用は困難であった。
この事例ではPFPの結晶構造におけるエネルギーの精度を評価するため、PFPとDFTのそれぞれで相図(0 Kで組成比に注目したもの)を描き、比較を行った。
計算モデルと計算方法
相図は、候補となるすべての結晶構造の形成エネルギーを計算し、それらを組成比-エネルギーの平面にプロットすることで得ることができる。
この中で最もエネルギーの低い点をつないだ凸包(convex hull)をとったとき、凸包を構成する点が安定構造、凸包よりも上に位置する点が準安定構造となる。(準安定構造は、相分離して凸包上の安定構造に変化したほうがエネルギー的に安定。)
元素が3つの場合は組成比が2自由度となるため3次元空間、より多い場合にはさらに高次元の空間となる。いずれの場合も同様に凸包をとることで安定構造と準安定構造を区別することができる。

計算結果と展望
右図上はPFPとDFTそれぞれで描画したNi-Ga-Nd 3元系の相図である。黒の点が凸包上の構造に相当する。PFPとDFTでよく似た相図が描けていることがわかる。
右図下は、3元系までのすべての元素の組み合わせに対して相図を描き、その中で準安定構造であったものについて凸包からの距離(energy above hull)を計算したものである。(図はlog-log plot。)PFPとDFTでのエネルギーのずれはMAEで0.0284 eV/atomであった。


計算条件
