Hildebrand溶解度パラメータの算出
事例提供者:
株式会社クロスアビリティ
テーマ概要
Hildebrand (ヒルデブランド)の溶解度パラメータ(solubility parameter, SP値, δ)は、蒸発熱を比体積で規格化した値です[1]。値が近い化合物ほど互いに相溶しやすいということが経験的に知られており、蒸発熱や比体積といった比較的実験やMD計算から測定しやすい物性値から算出できるため、材料開発から創薬まで幅広い分野で利用されています。
この事例では、7種類の低分子有機化合物のヒルデブランド溶解度パラメータをMatlantisで計算し、実験値[2,3]およびGAFF力場による計算結果[4]と比較しました。
本計算事例のサンプルスクリプトはmatlantis-contrib上で公開されています。
・https://github.com/matlantis-pfcc/matlantis-contrib/tree/main/matlantis_contrib_examples/solubility_parameter
計算モデルと計算方法
今回計算した物質を図に示しました。
SP値は図の式に従って算出しました。ここで、Evapor、Eliquidはそれぞれ気相、および、液相の1分子あたりのポテンシャルエネルギー、ρはNPT計算で算出した平均密度、Mは分子量です。〈〉はアンサンブル平均を表します。MD計算の計算条件は表に示した通りで、MD計算実行前にエネルギー極小化計算を実施しています。
系のモデリングにはWinmostar[5]を用いました。
計算結果と展望
図と表に実験値[2, 3]と計算値[2, 4]とを比較した各物質のヒルデブラント溶解度パラメータの結果を示します。実験値との相関係数R2です。この事例では、PFPによるSP値のほうがGAFFよりも良い実験との相関を示しました。