オープンソースMLIPとの比較

界面での反応や拡散など、実際の材料開発で重要な現象を現実に近いモデルで説明するには、少数の原子によるモデリングや、短時間の分子動力学シミュレーションだけでは不十分なことがあります。そのため、MLIPの性能を評価する上で、シミュレーション可能な原子数と計算速度は重要な指標となります。

OSS-MLIP との比較(Pt fcc)

ここではPFP v9 と OSSの MLIPについて、計算可能原子数と計算速度を比較した結果を紹介します。PFP は Matlantis 上で実行し、他の MLIP は NVIDIA A100 GPU(GPU メモリ 80GB)と ASE Calculator を用いて計算を行っています。Pt の fcc 構造の supercell を拡大して原子数を増やし、それぞれ力の計算を 10 回行った平均時間を計算速度としました。

その結果、同一原子数での計算において PFP の計算速度が最も速く、原子数の増加に対する計算時間の増加も緩やかでした。以下の図と表はその比較結果です(図は視認性のため 50,000 原子以下、5 秒以下のデータのみ表示)。

各モデルの最大計算原子数は以下のとおりです。なお、PFP の最大原子数は GPU メモリ不足ではなく Matlantis が受け付ける系サイズの上限によるものです(この上限は契約プランによって異なります)。UMA-S は PFP より大きな系を扱えますが、約 30,000 原子での速度はそれぞれ PFP の 1/6 程度です。

表1. モデルごとの計算可能な最大原子数

Model (environment)Max. atoms
PFP v9 (Matlantis)42,875
SevenNet-Omni (A100)19,683
UMA-S (A100)97,336
MACE-MPA-0 (A100)13,824
MatterSim-v1-5M (A100)10,648
CHGNet (A100)4,913
eqV2-31M OMat MPtrj-sAlex (A100)1,728
Orb-v3 cons-inf-omat (A100)10,648

SevenNet-Omni との詳細比較

r²SCAN 汎関数で学習された公開 uMLIP である SevenNet-Omni(matpes_r2scan タスク)と PFP の r²SCAN 計算モード(以下 PFP-R2SCAN)を、Pt fcc、LiH 岩塩型構造(格子定数 4.083 Å)、液体水(8 分子の立方体セル)の 3 系で詳しく比較しました。計算条件は上記と同一です。

各系で SevenNet-Omni が計算できた最大サイズ(系名の下に記載)における、力の推論に要した時間を以下の表にまとめました。3 系すべてで PFP-R2SCAN の最大計算原子数は SevenNet-Omni の約 2 倍、同一サイズでの力計算も高速で、差が最も大きい液体の水では 12,288 原子で約 2.4 倍の速度差がありました。また、数密度が高い系の方が処理時間が増える傾向にあります。

表2. PFPとSevenNet-Omniに関する詳細な速度ベンチマークの結果

SystemMax. atomsTime per force evaluation (s/step)
PFP-R2SCAN
(Matlantis)
SevenNet-Omni
(A100)
PFP-R2SCAN
(Matlantis)
SevenNet-Omni
(A100)
Pt fcc
(at 19,683 atoms)
44,10019,6831.291.99
LiH rocksalt
(at 11,664 atoms)
24,33411,6640.891.90
Liquid water
(at 12,288 atoms)
29,04012,2880.701.68

この結果は、PFP を用いることで、OSS-MLIPと比較して大規模な系のシミュレーションや、凝集系などの長時間のシミュレーションが実行可能になることを示唆しています。これにより、複雑な現象の解明や精度の高い物性計算が進展すると期待されます。