エポキシ樹脂の熱分解反応は、プラスチックリサイクルのプロセス設計において重要です。通常、ポリマー分子の熱分解は高温で進行し、様々な小分子が生成されます。 このような反応過程を扱う方法として、反応力場(ReaxFF)を用いた古典分子動力学(MD)シミュレーションが広く用いられています。これにより、分解反応を詳細に解析することが可能です。 一方、ReaxFFは力場の作成が難しいという課題があります。そこで、学習済みの汎用ポテンシャルであるPFPを用いて同様の計算を行い、結果の検証を行いました。
計算にはエポキシ樹脂のモノマー(図1)15分子からなる構造モデルを用いました(図2参照)。NPTアンサンブルによる平衡化を行った結果、系の密度は0.95 g/cm³でした。この値は実験、および、ReaxFFによる先行研究の結果と一致しています。
その後、NVTアンサンブルを用いて温度を上昇させるシミュレーションを行い、熱分解反応に対する温度条件の影響を評価しました。
図3に経過時間に対するセル内の分子の個数を示します。最終温度Tend=2300 Kの結果(図3(a))から、2000 K付近からエポキシ樹脂の分子数が減少し、その後に小分子が生成することが分かります。これは、まずエーテル結合の解離が起こり、その後に熱分解が起こることを示しています。小分子の生成は、CH2O、CO、CH4の順に起こっています。
より高温のTend=4300 Kの場合、2000K以上においてH2、CO、H2Oが生成しています(図3(b))。Tend=2300 Kの結果に対して、より小さな分子にまで分解がすすむことが分かります。この結果は先行研究と一致し、PFPが有機化学反応を精度良く計算できることを示しています。
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未知の材料を含む、分子や結晶などの任意の原子の組み合わせにおいてシミュレーションが可能です。現在は72の元素をサポートしており、今後さらに拡大予定です。
DFT(Density Functional Theory:密度汎関数法)では、高性能なコンピュータを用いて数時間~数カ月かかった原子レベルの物理シミュレーションを、数秒単位で行うことができます。
学習済み深層学習モデル・物性計算ライブラリ・高性能な計算環境をパッケージにすることで、ハードウェアの準備や環境構築をすることなく、シミュレーションによる材料探索が可能です。また、従来の機械学習ポテンシャルとは異なり、ユーザーによるデータ収集や学習が不要です。