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Matlantis™活用事例
株式会社クラレ<br>Matlantis™活用事例:image(左から) 株式会社クラレ 研究開発本部 企画管理部長 兼 デジタルソリューション部長 鎌田様、研究開発本部 本部長 須郷様、研究開発本部 デジタルソリューション部 主管 三浦様

株式会社クラレ
Matlantis™活用事例

AIや実験データと組み合わせることで、研究開発のレベルアップに計算化学が貢献。“グローバルで戦っていくための強力な武器になり得ると期待しています。”

株式会社クラレ

業  種
化学
事業内容
樹脂、化学品、活性炭、繊維などの製造・販売
化学

化学産業がグローバルでの競争力が求められている現在、株式会社クラレは世界トップレベルの技術の優位性を保ちつつ、新たな素材開発に取り組んでいます。「デジタルを経営に取り込み、高い競争力を持って常に進化し、世の中に貢献する」という、クラレグループのDXビジョンのもと、研究開発本部では「幅広い材料開発のスピードアップ」という課題に対し、Matlantis ™ をDX基盤技術として導入し、AIや実験データと組み合わせて課題解決を図っています。研究開発本部長の須郷氏と、2025年1月に本部内に設立されたデジタルソリューション部の部長の鎌田氏、同部主管の三浦氏の3人にお話を聞きました。

Q.従来のシミュレーション技術は、御社の中でどのような立ち位置でしたか。

鎌田 当本部内でシミュレーションを活用しようという波は何度もありましたが、実験前の候補物質等の絞り込みに活用するには程遠く、実験結果の理由付けに留まっていました。そのため「シミュレーションの活用範囲は未だ限定的」という認識であったと思います。

三浦 以前のシミュレーションツールは計算に非常に時間がかかるので、結局は実験した方が早く、かなり狭い範囲の材料しかシミュレーションできないなど制限も多いため、残念ながら我々の求めるスピード感に耐えるものにはなりえませんでした。

Q. Matlantis ™ の導入によってどのような成果がありましたか。

須郷 まず最初の検証段階で6-12か月費やすと想定していましたが、3か月の検証でMatlantis™ が他の製品と比較して優れていると判断しました。

三浦 私たちの研究開発の中で触媒開発は非常に重要な領域です。Matlantis ™ は、計算速度が従来手法の数万倍以上速く、当社で使う材料に対して化学的に妥当な結果を与える十分な精度を有していることがわかったので、実用性が見込めると感じました。私は以前、量子化学の分野にいましたが、このレベルの結果が出せるソフトに出会ったのはMatlantis™ が初めてです。例えば、13個の触媒改良のアイデアをMatlantis™ でシミュレーションしたところ、その中に当たりはないという結果が出たので、この13個のアイデア検証にリソースを割く必要はないということがわかりました。従来の手法であればこの結果を見るまでに2、3年はかかったはずですが、Matlantis ™ は1カ月半で導き出したので、研究開発の効率化と加速化を実現できると確信しました。現在は他の材料開発でも候補材料の絞り込みに効果を出しており、非常に良い効果が得られています。

鎌田 シミュレーション技術によって様々な検証スピードがアップするので、開発者が今まで以上にアイデアを出すことが重要な能力になってくるのではないかと感じます。これまでは、計算化学の立ち位置は実験の後付けでしたが、いまは事前検討でMatlantis™ を使いシミュレーションしてから実験を行うようになってきています。

三浦 Matlantis ™ は他の技術と組み合わせることで威力を発揮しています。Matlantis ™ 単体では、当社が工業レベルで扱う固体触媒の性能を予測することが難しいのですが、Matlantis ™ によるシミュレーションデータを学習したAIを作成することによって、一定レベルの性能予測が可能になりました。

鎌田 大きな構造の予測や提案にMatlantis ™ のデータ、実験データ等を活用することがチームの大きな課題のひとつで、これから取り組みを進めたいと考えています。

Q. 費用対効果としてはいかがでしょうか。

三浦 スパコンなどでMatlantis ™ と同じリソースを確保しようとすると、マシン自体が非常に高価ですし、環境構築、管理、ランニングコストもかかるわけですから、クラウドで運用できるMatlantis ™ は経済的な合理性があると考えています。

鎌田 Matlantis™導入について社内周知がまだ行き届いていないにもかかわらず、かなりの数のシミュレーションの依頼が来ていて対応しきれない現状です。人員体制を整えて、ある程度の依頼量をこなし、どのような課題解決に貢献したかがわかるようになってから全社的な費用対効果を見ることになると思います。

Q. Matlantis ™ を活用して、これから目指すことを教えてください。

鎌田 当社には高分子材料や活性炭といったスケールの大きな構造が機能の重要な役割を果たしている製品が多くありますので、そうした物質の予測や提案にMatlantis ™ のデータと実験データをいかに展開させるかが大きな課題のひとつです。複合的なデータを活用してより良い課題解決の提案ができるようになれば、レベルの高い取り組みになりますから、そこを目指していきたいですね。

三浦 ポリマーの性能予測実現を目指しています。ポリマーの性能は、Matlantis ™ ではシミュレーションができない非常に大きなサイズスケールの分子構造で決まるため難しいところですが、  私はMatlantis ™ を他の技術と組み合わせることで可能になると見込んでいます。他にも弊社にとって重要な樹脂材料の性能予測、背景や要素の理解など、優れたシミュレーション技術を作っていきたいと考えています。

須郷 今後はシミュレーションを研究開発におけるDX基盤のひとつとして、どういう形で発展させていくかを考えていかなければなりません。当社としての運用はまだ緒に就いたばかりですが、日本の化学産業の主戦場はグローバルです。ここで戦っていくために、アイデアを早く検証していくサイクルを作ることが競争優位の源泉の一つになる。Matlantisはそのための強力な武器になり得ると期待しています。

須郷 様
研究開発本部
本部長

鎌田 様
研究開発本部 企画管理部長 兼
デジタルソリューション部長

三浦 様
研究開発本部
デジタルソリューション部 主管

株式会社クラレについて

1926年に化学繊維レーヨンの事業化を目的として岡山県倉敷市に設立。1950年には合成繊維ビニロンを世界で初めて事業化するなど、日本における化学合成繊維産業の草創期を切り開いてきた。その後、高分子化学・合成化学の独自技術をベースに化学分野で拡大を続け、今日では樹脂、化学品、活性炭、繊維などを製造・販売するスペシャリティ化学企業として、世界32カ国・地域で事業を展開している。

本社所在地:東京都千代田区大手町2-6-4 常盤橋タワー (総合受付21F)

詳しくは、ウェブサイトをご覧ください:https://www.kuraray.co.jp/

*文中に掲載されている会社名・商品名は、各社の商標または登録商標です。
*文中に掲載されている情報は、インタビュー時の情報です。

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Features
Features

Matlantisの3つの特長

革新的なマテリアルの創出に貢献し、持続可能な世界を実現するために「Matlantis」は生まれました。

汎用性/ Versatile

汎用性 / Versatile イメージ
幅広い元素・構造に対応

現在96種の元素に対応しております。これは自然界に存在するすべての元素を含むため、ユーザーは元素種の制約をほとんど受けることがありません。これらの元素種について、未知の材料を含む分子や結晶など任意の原子の組み合わせに対してシミュレーションすることが可能です。

高速 / High Speed

高速 / High Speed イメージ
従来手法の10,000倍以上高速

DFT(Density Functional Theory:密度汎関数法)では、高性能なコンピュータを用いて数時間~数カ月かかった原子レベルの物理シミュレーションを、数秒単位で行うことができます。

使いやすさ / Easy to Use

使いやすさ / Easy to Use イメージ
ブラウザを立ち上げれば
シミュレーションを開始できます

学習済み深層学習モデル・物性計算ライブラリ・高性能な計算環境をパッケージにすることで、ハードウェアの準備や環境構築をすることなく、シミュレーションによる材料探索が可能です。また、従来の機械学習ポテンシャルとは異なり、ユーザーによるデータ収集や学習が不要です。

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