HPC システムズ株式会社(代表取締役 小野 鉄平、以下 HPC システムズ)、株式会社Preferred Computational Chemistry(代表取締役社長 岡野原 大輔、以下PFCC)およびENEOS株式会社(代表取締役 宮田 知秀、以下 ENEOS)は、共同開発した「GRRM20 with Matlantis」の提供を2024 年3 月11 日(月)に開始 1※ します。「GRRM20 with Matlantis」は、MatlantisTM 上でGRRM を用いることにより、革新的な計算速度で化学反応経路の自動探索を実現します。国産ソフトウェアである「GRRM20 with Matlantis」を国内にサービス展開するとともに、グローバルスタンダードのソリューションとして海外にも順次展開していきます。
GRRM は、原子・分子レベルのさまざまな化学反応 2※ に関して、網羅的な反応経路探索 3※ や複雑な反応経路ネットワークの構築といった、多様な目的で力を発揮する計算プログラムです。GRRM では、多くの場合、外部の量子化学計算 4※ ソフトウェアを呼び出すことで反応経路を探索しますが、量子化学計算は計算に長い時間を要するという課題があります。一方で、PFCC が提供するMatlantis は、深層学習モデルを用いることで、量子化学計算に匹敵する精度の結果を従来の数万倍高速に得られる原子レベルシミュレータです。また、未知の材料を含む分子や結晶など、任意の原子の組み合わせをシミュレーションできる汎用性も有しています。そこで、Matlantis を用いて、ENEOSの化学技術に関するドメイン知識を活用し、従来よりも大規模な分子や結晶系に対して、GRRM の網羅的な反応経路探索を実現する「GRRM20 with Matlantis」を開発しました。「GRRM20 with Matlantis」は次世代の研究開発の一翼を担うと期待されます。
GRRM20 with Matlantisは反応物の情報から、量子化学計算レベルの精度で極めて高速に反応経路を自動探索できます。
GRRMは、HPC システムズが提供する、量子化学の予言性を利用して未知の化学反応経路を自動的に探索する、世界初の計算プログラムです。GRRM に実装されているAFIR 法は、北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(世界トップレベル研究拠点プログラム:WPI-ICReDDの研究グループなどで現在も進化を続けており、新しい化学反応の合理的設計と高速開発を目指す先端研究開発が展開されています。
MatlantisはPFCC が展開するクラウドベースの汎用原子レベルシミュレータです。
HPC システムズは、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野のニッチトップ企業です。HPC 事業では、科学技術計算用高性能コンピュータとシミュレーションソフトウェア販売、科学技術計算やディープラーニング(深層学習)環境を構築するシステムインテグレーションサービス、シミュレーションソフトウェアプログラムの並列化・高速化サービス、計算化学ソフトウェア、マテリアルズ・インフォマティクスのプログラム開発・販売、受託計算サービス・科学技術研究開発支援、創薬研究開発や素材・材料研究開発分野向けサイエンスクラウドサービスをワンストップで提供しています。
PFCCは、株式会社Preferred Networks とENEOSが共同開発した汎用原子レベルシミュレータ Matlantis をクラウドサービスとして販売することを目的に、両社の合弁会社として2021 年6 月に設立されました。PFCC はユーザー企業・団体による革新的な材料の創出に貢献し、持続可能な世界を実現することをミッションとして掲げています。
ENEOSは、石油、電力、石炭、ガス、化学品など多岐にわたる事業を通じ、資源調達から、精製・生産、物流・販売に至るすべてのプロセスを担い、エネルギーを供給しています。また、水素、風力、太陽光をはじめとする、環境に配慮した新エネルギーの開発・普及など、幅広く事業を展開しています。人々の生活や経済を支える「生命線」ともいえるエネルギーの安定的な供給を確保しながら、社会のニーズや課題に向き合い、新たな価値を創り出すことで、社会の発展と活力ある未来づくりに貢献します。
※1 ライセンス形態につきましては、「GRRM20 with Matlantis」のサイトをご確認ください。 https://www.hpc.co.jp/chem/software/grrm20-with-matlantis※2 有機反応、有機金属触媒反応、結晶の相転移など。 ・有機反応:有機分子単体ないしは複数の有機分子の間で起こる化学反応。 ・有機金属触媒反応:金属原子を含む有機分子を触媒にして起こる化学反応。 ・結晶の相転移:ある組成の物質がとりうる複数の結晶構造のうちの一つから、 別の結晶構造に構造が変化すること。※3 化学反応が進む過程(反応経路)を分子レベルで詳細に理解するための手法。 具体的には、反応物から生成物に至る途中の中間体や遷移状態などの分子構造を探索することで、 反応機構を解明し、化学反応の理解を深めることができる。 ※4 分子構造や分子の物性、反応機構などを量子力学に基づいた計算から予測する方法。 分子設計や材料設計、反応機構解明の手段としてさまざまな分野で活用される。
・GRRM:量子化学探索研究所・Matlantis:株式会社Preferred Computational Chemistry・その他記載されている製品名など:各社、団体の商標または登録商標