材料探索を高速化する汎用原子レベルシミュレータ Matlantisを米国で提供開始
株式会社Preferred NetworksとENEOS株式会社の合弁会社である株式会社Preferred Computational Chemistry(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:岡野原 大輔、プリファードコンピュテーショナルケミストリー、以下、PFCC)は本日、材料探索を高速化する汎用原子レベルシミュレータ Matlantis™(マトランティス)を米国の企業・団体向けにクラウドサービスとして提供開始しました。MatlantisはNature Communications誌のEditor’s Choiceにも選出された独自のAI技術を用いることで、従来のdensity functional theory (DFT) 計算の最大2,000万倍のスピードで新材料の原子レベルのふるまいをコンピュータ上でシミュレーションすることが可能です。現在、国内では50以上の企業・団体が新材料の探索にMatlantisを利用しています。
PFCCが2021年7月にMatlantisを国内向けに提供開始して以降、PFNとENEOSはMatlantisのシミュレーション精度や汎用性を継続的に高め、PFCCはユーザーベースの拡大、ユーザーフィードバックの収集、国外向けサービス体制の構築を進めてきました。Matlantisは最大約1万9,000原子を一度にシミュレーションすることが可能で、地球上に存在する元素の質量比で99.9969%以上[出典]である72元素の組み合わせに対応しています。Matlantisのコア技術であるニューラルネットワークポテンシャル「Preferred Potential (PFP) 」の最新版(v4)は3,300万以上の仮想的な分子や結晶などの構造からなるデータセットで訓練されているため、未発見の材料のふるまいを原子レベルでシミュレーションし、有望な候補を探索することが可能です。最新のPFPの訓練データセットはスーパーコンピュータ*を用い、GPU (graphic processing unit、画像処理装置)1台に換算すると1,650年かかる計算量で生成されています。
現在、Matlantisのクライアントはアカデミア、自動車、化学、電機、エネルギーなど多くの領域にまたがり、2023年1月~3月の3か月間でシミュレーションされた原子数は累積2.6兆個におよびます。探索対象の材料の用途は電池や半導体のほか、クリーンなエネルギーや環境、産業プロセスに必要な触媒、吸着剤、合金など多岐にわたります。
PFCCの代表取締役社長である岡野原大輔は次のように述べています。
「米国はこれまで数多くの画期的な技術を生み出してきた中心地であり、Matlantisによって米国の計算科学者の皆さまがさらに多くのブレークスルーを起こすサポートができることを嬉しく思います。今後はさらに多くの国でMatlantisを提供し、世界中で革新的な新材料の開発を加速することで持続可能な未来に貢献していきたいと考えています。」
米国でのサービス提供にあたり、マテリアルズ・インフォマティクスの最新動向や材料探索のためのニューラルネットワークポテンシャルの利用法について学ぶ機会として、PFCCはマサチューセッツ工科大学のJu Li教授を講師に迎えた無料のウェビナーを2023年5月30日8:00~9:30(日本時間)に開催する予定です。登録は matlantis.com で受け付けています。
*PFPの最新バージョンは、PFNのスーパーコンピュータおよび国立研究開発法人産業技術総合研究所のAI橋渡しクラウド(ABCI)を用いて開発されました。
株式会社Preferred Computational Chemistry(PFCC)について
PFCCは2021年6月に、株式会社Preferred Networks(PFN)とENEOS株式会社の合弁会社として、PFNとENEOSが共同開発した汎用原子レベルシミュレータ Matlantis™をクラウドサービスとして販売することを目的に設立されました。PFCCはユーザー企業・団体による革新的な新材料の創出に貢献し、持続可能な世界を実現することをミッションとして掲げています。