MOF-74NiにおけるH2O分子の吸着と拡散挙動

テーマ概要

ゼオライトに代表されるようなナノサイズの微小細孔を持つ材料は吸着材、分離膜、触媒材料として幅広い分野で利用されており、学術的な研究も盛んに行われています。[1]

Metal-organic frameworks(MOFs)は比較的新しいクラスのナノ細孔構造を持つ結晶材料で、そのユニークな特徴から次世代材料として注目を集めています。

一部のMOFは金属サイトが細孔内方向にむき出し状態で吸着脱離等、化学反応の起点になり得ます。その中でもH2Oの吸着Energyや高温状態での吸着分子の挙動をMatlantisを用いて計算してみます。

本計算事例のサンプルスクリプトはmatlantis-contrib上で公開されています。

image

計算モデルと計算方法

ここではMOF-74における水分子の吸着Energyを構造最適化を用いて計算を行います。

MOF-74の結晶構造はCambridge Crystal Structure Database[2]から取得可能です。(hydrated: LEJRIC_288478, dehydrated:LECQEQ_288477)。

取得した構造をベースに、孤立した水分子、MOFのみ、水分子の吸着したMOFのそれぞれの構造を作成します。

構造作成が終わったら構造最適化を行います。

image

計算結果と展望

先行文献[3]と同等な精度でH2Oの吸着エネルギーを計算することができました。分子動力学simulationを行ったところ、H2OがNiOノード間をホッピングするように拡散する様子も確認されました。

MOFは一般に元素種が多様で、細孔構造が存在するため数百原子を超えるような大きな結晶構造になる傾向があります。Matlantisの汎化性と高速な計算により、従来の計算手法では非常に高コストな検討を現実的な計算時間で実行でき、材料探索に適用できます。

【水分子の吸着Energy】Ea[kJ/mol] : 48.3 / 64.4 (分散力補正アリ)
【先行文献計算結果】[3] Ea[kJ/mol] : 61.0 (分散力補正アリ)

image

計算条件

image

参考文献

[1] O.M. Yaghi, Science 2013, 341, 1230444 https://www.science.org/doi/10.1126/science.1230444 [2] https://www.ccdc.cam.ac.uk/solutions/data/ [3] F. Bonino, et. al., S. Chem. Mater. 2008, 20, 4957 https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/cm800686k

タグ

新着情報

NEW

LightPFPを用いたSiO₂ドライエッチングシミュレーション

半導体

ALD前駆体とSi基板との表面反応機構解析

ALD半導体

アンモニア合成触媒開発のための触媒スクリーニング

Catalysts

NEB法を用いたMOFのCO2吸着ダイナミクスの解析

AdsorbentMOF

Hildebrand溶解度パラメータの算出

Hildebrand溶解度パラメータSP値