コバルト触媒におけるCO解離反応の活性化エネルギー
再エネ合成燃料
再生可能エネルギー由来の「水素」と「CO2」を原料とした「再エネ合成燃料」用触媒の検討例になります。
合成燃料である炭化水素を作る反応はFischer-Tropsch(FT)反応と呼ばれ、「水素」と「CO」から触媒を用いて炭化水素を作ります。触媒にはコバルトや鉄が用いられています。
Fischer-Tropsch(FT)反応
FT反応は非常に多くの素反応からなる複雑な反応ですが、その中でもCO解離反応は律速となる反応のひとつと考えられています[1][2]。今回コバルト触媒におけるCO解離活性化エネルギーをMatlantisを用いて計算してみます。
○:水素 ●:酸素 ●:炭素 ●:Co触媒
計算モデルと計算方法
ここではNEB計算によりCo(0001)表面上でのCO解離反応の活性化エネルギーを計算します。コバルト触媒構造はMaterials Projectデータベースより取得することができます。
取得した構造を用いてNEB計算用のモデルを作成します。 Co(0001)表面を作成した後、CO分子を吸着させた始状態(IS)、終状態(FS)を作成していきます。
IS、FSの構造作成が終わったらNEB計算を行います。
計算結果と展望
NEB計算により先行文献[2]と同等な精度でCO解離活性化エネルギーを計算することができました。このようにMatlantisを用いることで、従来は計算コストの高かった活性化エネルギー計算を非常に高速に行うことができます。
多くの元素を学習したMatlantisでは現実的な時間で、数千回以上の活性化エネルギー計算をできるので、性能の高い触媒の提案も可能となります。
例えば、触媒元素の一部を様々な元素で置換し、 CO解離活性化エネルギーを計算すると、バナジウム元素に一部置換した場合に活性化エネルギーは低下します。バナジウムがFT反応を促進する元素として機能することは、実験的にも知られています[5, 6]。
このことから、Matlantisは単一組成での吸着や物性、現象の解明だけではなく、汎化性・高速性な特性を生かし、複数の元素や構造を考慮した材料スクリーニングまで行うことができます。