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Matlantis活用事例
花王株式会社<br/>Matlantis活用事例:image(左から)グループリーダー 振角 一平様 / 阪井 研人様 / 関 友崇様 / テーマリーダー 武田 康助様

花王株式会社
Matlantis活用事例

開発のスピードアップに貢献するMatlantis の使いこなし、計算化学で実験の先回りを実現。 
“開発部門のスピード感に付いていける計算スピードや効率的なシステムが望まれているところに数万倍の計算スピードを実現したMatlantisが登場したことで、具現化までの道筋が一挙に増えたと感じています。”

花王株式会社

業  種
化学
事業内容
化粧品、医薬部外品、産業用化学製品、衛生用品の製造及び販売、等

あらゆるプロダクトにまつわる変化が激しい昨今、開発のスピードアップが求められています。花王株式会社では、マテリアルズインフォマティクスなどを活用した商品開発期間の短縮などに取り組んでいますが、その中でも触媒は特に開発期間の短縮が求められる分野のひとつです。
触媒はグリーンケミストリー12か条にも言及されているように、ESGには重要な技術です。しかし、その候補の多さから従来の開発法では、どうしても開発期間が長くなるという課題があったため、花王ではまず計算によって理想とする触媒の探索を行うことで開発期間を短縮する構想を立てました。そこにMatlantisを組み込むことで、触媒開発期間の短縮に成功しました。この取り組みについて、今後の展望も含めて研究開発部門 解析科学研究所の4名にお話をお聞きしました。

Q.どのような研究開発に取り組んでいるのか教えてください。

武田 研究開発部門 解析科学研究所では、主に計算化学の技術全般を使って、花王のモノづくりを支える研究をしております。技術としては、量子化学計算や分子動力学計算などを用いて材料開発におけるシミュレーションを行います。2021年からMatlantisを導入し、触媒という対象に多面的なアプローチで取り組んでいます。

図1) 触媒の設計の難易度:触媒は金属の組成だけでなく作り方によって原子配列、配位数、表面形状が異なるため、無限の選択肢の中から候補触媒を探さなくてはならない

Q.従来のシミュレーションとMatlantisとの違いは何でしょうか。

関 精度の高いDFT計算は触媒など多くの対象に使えますが、 時間がかかるのがネックです。それをほぼ変わらない精度で何万倍も速くできるというのは、計算化学をやっている者としては相当なインパクトでした。開発部門のスピード感に付いていける計算スピードや効率的なシステムが望まれているところに数万倍の計算スピードを実現したMatlantisの登場したことで、具現化までの道筋が一挙に増えたと感じています。

阪井 従来の触媒開発では経験や勘、文献等に頼って材料の目星を付けて、少しずつ条件を変えて実験を繰り返すことがほとんどでしたが、これまでになかった反応そのものを計算で予測したいと考えており、Matlantisがあれば可能であると考えています。

武田 これまでは現実的な時間の中で成果を得るために候補物質を優先度の高いものに絞り込み、その中から良し悪しを比較していました。Matlantisではそうした絞り込みをしなくてもよいので、これまで避けていたものにまで簡単に手を伸ばせるようになります。未知の領域からもっといいものができるはずという提案ができるようになりました。

Q. Matlantisの導入によって触媒開発のプロセスは変わりましたか?

振角 これまでは計算が遅いために「一番いい計算」に最適化していたところを、考えられるものは全部計算するとマインドチェンジすることになりました。

阪井 一つひとつの計算結果は速く出るものの、それをそのまま他部署に提案しても、現場で使える情報にはなりません。結果を組み合わせて実験者が知りたい情報として提示するところまではMatlantisに用意されていないので、触媒反応を計算化学で先回りし、予測するシステムの構築を目指しました(図2)。

関 これまでは狙いの材料が合成できない場合に、実験条件の問題なのか物理的に不安定なのかといった原因を突き止めにくく、かなりの時間がかかっていました。見込みがない条件を試し続けることになれば、時間も労力もかなりのロスになります。例えるなら、宝物が埋まっていないのに掘り続けるようなものです。そこを計算で先回りして、宝物の有無を予測することで開発をスピードアップできると考えています。

武田 触媒の安定性予測の取り組みでは、計算結果にそれなりの自信をもっているからこそ、実験条件を見直してうまくいったケースもあったと聞いています。

図2) 花王が挑戦した新しい触媒開発プロセス:従来の方法は実験とその結果のフィードバックから生み出すため、どうしても実験者の知見・経験が頼りであった一方で、新しいプロセスは計算によってあらかじめゴールを設定するため、開発期間の短縮が期待できる

Q. その他に変化はありましたか。

阪井 化学的な考察を行うにはある程度まとまった計算結果が必要であり、これまではずいぶん時間がかかっていました。今ではすぐにまとまった結果が出てくるので、すぐに考察できます。Matlantis 自体ではなく、化学的に未解明な部分についての課題が出てくることが多々あるのですが、それもスピードアップによって考える時間ができました。

関 これまでは時間がかかるために、開発の課題に対してスポット的に対応することが多かったのですが、計算が速くなったことで実験研究者たちとのタイムラグが小さくなったように感じています。開発の各フェーズ、各プロセスでも一緒に取り組むことができ、深いところまで連携しているのだという意識がとても強くなりました。

図3) 新しい触媒活性プロセスによる触媒開発:計算で主金属に対して第2成分を加えた時の性能を予測し、候補となる添加成分種を決定。そこから実験者が計算で示された触媒を匠の技で具現化することで優れた触媒の短期開発に成功。

Q. Matlantisを活用して、これから目指すことを教えてください。

阪井 花王のメジャー分野は洗剤や化粧品などです。色々と試していいものを探すという開発プロセスは同じなので、いずれそうした分野にも計算から始まるサイクルがスタンダードになれば、弊社内での市民権が確立できるのではないかと思います。ただ、触媒開発で培った技術をそのまま使うことはできないので、新たな技術開発が必要になるでしょう。

振角 実験研究者が手軽に使えるようになれば、実験に伴う危険の回避などメリットも大きいですから、会社全体にとっても非常にプラスになるはずです。

武田 今のMatlantisが提供する機能の中でも、うまく組み立てれば、メジャー分野にも生かせるものがあるだろうと思います。大きな目標に向かって、さらにMatlantisを使いこなし、使い倒せるようになりたいと考えています。

振角 一平様

研究開発部門 解析科学研究所
グループリーダー

武田 康助様

テーマリーダー 
シミュレーション手法の導入などご担当

阪井 研人様

入社6年目 
触媒の化学反応の予測ご担当

関 友崇様

入社5年目 
無機材料の安定性予測ご担当

花王株式会社について

1940年に設立された花王は、生活者向けの製品を扱う「コンシューマープロダクツ事業」と、産業界のニーズにきめ細かく対応した製品を扱う「ケミカル事業」を展開しています。

所在地:東京都中央区日本橋茅場町一丁目14番10号

詳しくは、ウェブサイトをご覧ください:https://www.kao.com/jp/

*文中に掲載されている会社名・商品名は、各社の商標または登録商標です。
*文中に掲載されている情報は、インタビュー時の情報です。

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Features
Features

Matlantisの3つの特長

革新的なマテリアルの創出に貢献し、持続可能な世界を実現するために「Matlantis」は生まれました。

汎用性/ Versatile

汎用性 / Versatile イメージ
幅広い元素・構造に対応

現在96種の元素に対応しております。これは自然界に存在するすべての元素を含むため、ユーザーは元素種の制約をほとんど受けることがありません。これらの元素種について、未知の材料を含む分子や結晶など任意の原子の組み合わせに対してシミュレーションすることが可能です。

高速 / High Speed

高速 / High Speed イメージ
従来手法の10,000倍以上高速

DFT(Density Functional Theory:密度汎関数法)では、高性能なコンピュータを用いて数時間~数カ月かかった原子レベルの物理シミュレーションを、数秒単位で行うことができます。

使いやすさ / Easy to Use

使いやすさ / Easy to Use イメージ
ブラウザを立ち上げれば
シミュレーションを開始できます

学習済み深層学習モデル・物性計算ライブラリ・高性能な計算環境をパッケージにすることで、ハードウェアの準備や環境構築をすることなく、シミュレーションによる材料探索が可能です。また、従来の機械学習ポテンシャルとは異なり、ユーザーによるデータ収集や学習が不要です。

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