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Atomistic simulation tutorial の公開

原子シミュレーションを活用した材料開発のさらなる促進のため、atomistic simulation tutorial を公開します。以下で、ドキュメント及びコードを公開しています。

内容

公開時点では以下のようなコンテンツが含まれています。

  • 1章: Introduction (導入)
  • 2章: Opt (構造最適化)
  • 3章: Energy
  • 4章: Vibration, phonon, 各種自由エネルギー
  • 5章: 反応経路探索
  • 6章: MD (分子動力学法)

公開後も随時コンテンツを更新し、さらに幅広いトピックをカバーしていきたいと考えています。

背景

原子シミュレーションを用いることで、実験的に知られている現象の機構解明を行ったり、これまで想定していなかったような元素の組み合わせ・構造に対する解析を行い新材料開発を行ったりすることができます。近年SDGs (Sustainable Development Goals)といった言葉が使用されるようになり、世の中を持続可能な形でよりよい世界にしていくことを目指す活動が盛んになっています。そのなかで、脱炭素社会へ向けた再生エネルギー活用のための高効率な触媒・電池材料の開発が求められています。

またIoT・AI・5Gといった技術の進展にともない、より高性能な半導体の開発も求められているなど、世の中では様々な新材料開発の需要があります。

シミュレーションを用いることにより、今までは想定もしていなかったような網羅的な材料空間から候補の絞り込みや、実験では観測が難しいような現象の解明ができる可能性があります。

しかし、シミュレーションを行う際には専門知識が必要となります。

化学や物理の理論を学ぶ上で参考となる教科書は多数存在しますが、実務で取り組む場合はまた違った知識が必要となります。今回公開したチュートリアルではそういった実践的な内容にフォーカスし、実際に読者の方がシミュレーションを実行できるようになることを目的としています。

PFCCではMatlantis™を提供しており、様々な原子シミュレーションが実行できる環境を提供しています。従来の古典力場では扱える系に都度確認が必要、量子化学計算ベースの力場は計算時間がかかり、気軽に計算が行えないという状況でした。Matlantisのコア技術として使われているPFPは、高速性・汎用性を両立しており、様々な原子系のシミュレーションを実行し、試行錯誤をしてみるという学習用途にも最適であり、今回のようなチュートリアルを作成することができました。

PFPについて詳しくは、以下の文献もご覧ください。

本チュートリアルの作成にあたって意識したこと

  • できるだけ図示を含めてわかりやすく
    • オンラインで公開している教材という特色を活かし、できるだけ図示を多くして読みやすくしたほか、原子を3D描画してInteractiveに動かして確認できるようにするなど工夫しました。
  • 数式の厳密な理解よりも実践的に必要な知識の習得にフォーカス
    • 実務でシミュレーションを行う上で必要な知識習得により注力し、簡易に読めるように工夫をしています。
    • 詳細な理解を行いたい読者には参考文献やリンクを貼り、深堀りした学習も進められるようにしています。
  • Hands on tutorialとする
    • 実際に手を動かして、実行しながら理解が進められるようにコードと文章を併記したHands on tutorialとしています。
    • ※: 実際にコードを動かすには、Matlantisの契約が必要です。Documentを読むだけでも原子シミュレーションでどのようなことができるのか、どのような計算の流れでシミュレーションを行うのかの理解は進めていけると思います。

最後に

大企業でもシミュレーションを専門に従事している人は、実験などを行っている人と比べるとまだ少ないという状況です。今後の新材料開発を進めていく上で、実験と計算を併用してできる人材がさらに増加することに貢献できれば幸いです。

また将来的には、大学で計算化学を学ぶ学生の方にも参考になる教材となれば幸いです。

以前にmatlantis-contribの公開をしましたが、本Tutorialはこれらの計算事例を理解するのに必要な事前知識の習得としても使えます。これをもとに、シミュレーションを用いた材料開発が更に活性化することを願っています。