GRRM20 with Matlantis

「GRRM20 with Matlantis」は、Matlantis 上でGRRM を用いることにより、革新的な計算速度で化学反応経路の自動探索を実現します。ここでは、一般的にGRRM で何ができるのか、Matlantis 上でGRRMを実行することのメリット、さらには具体的に GRRM20 with Matlantis を使った事例を紹介します。

GRRMについて:化学反応経路を“自動で網羅的に”探索する

GRRMは量子化学の予言性を利用して未知の化学反応経路を自動的に探索する、世界初の計算プログラムです。新材料、次世代エネルギー。あらゆる産業において、イノベーションの源泉となるのが「化学反応」です。しかし、反応に関与する原子の数Nに対して、3N-6次元におよぶ反応座標空間の中で目的の機能を発現させるための最適な反応経路を見つけ出すことは、極めて複雑な問題であり、長年の課題でした。NEB(Nudged Elastic Band)法やString法をはじめとした反応経路探索のための計算化学手法やコンピュータ性能の発展によりシミュレーションでの予測も可能になりましたが、これらの手法には期待する化学反応の初期状態(反応物)および終状態(生成物)のおおよその見積もりが必要であり、研究者の知識の外にある無数の可能性を見逃してしまうという課題がありました。

※ GRRM は 量子化学探索研究所の登録商標です。HPCシステムズより提供されています。GRRM に実装されているAFIR 法は、北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(世界トップレベル研究拠点プログラム:WPI-ICReDDの研究グループなどで現在も進化を続けており、新しい化学反応の合理的設計と高速開発を目指す先端研究開発が展開されています。

GRRMの特徴

GRRM(Global Reaction Route Mapping)は、化学反応の初期状態(反応物)の構造を入力するだけで、量子化学計算に基づいて、中間体、遷移状態、生成物、副生成物などを、網羅的かつ自動的に探索します。その探索を支える中核技術が「人工力誘起反応(Artificial Force Induced Reaction、AFIR)法」です。これは、分子同士もしくは分子の中の部分構造同士に仮想的な人工力を加えて構造変化を誘起します。この操作を系統的に繰り返すことで、GRRMは広大な反応座標空間を人間の知識や思い込みの範囲を超えて網羅的に探索し、未知の生成物へと変換する反応経路や、収率低下の原因となる副生成物へのルートなどを明らかにする詳細な「反応経路マップ」を描きます。GRRMが導き出した反応経路マップを解析することで、未知の反応の予測を可能とします。

計算コストの大きな課題

GRRMで網羅的に反応を探索しようとする場合、高い精度のエネルギー計算を多数実行することにより、計算時間が長いという課題にしばしば直面します。特に、表面・界面における触媒反応などの大規模な系に対して、高精度な量子化学計算手法(DFT計算など)を適用することは、材料開発の現場で求められる時間枠内では困難です。この課題を解決するために、エネルギー計算などにMatlantisのPFPを用いるGRRM20 with Matlantis が開発されました。

GRRMとMatlantisを組合せたメリット:高速・高精度な大規模探索の実現

「網羅的な探索能力を持つGRRM」と「超高速な計算能力を持つMatlantis」。これら2つを組み合わせたGRRM20 with Matlantisにより、従来のオンプレミスのGRRM環境では困難であった、百~数百原子系での反応経路探索が現実的な計算時間で実施可能となり、反応経路探索における新たな可能性を切り拓きます。

探索にかかる時間を劇的に短縮

量子化学計算で行う多数のポテンシャルエネルギー計算をMatlantisのPFPが担うことで、反応経路の探索全体にかかる時間が劇的に短縮されます。従来の計算機環境では数ヶ月以上かかっていたような複雑な反応経路探索が、わずか数日で完了する事例も報告されており、研究開発における試行錯誤のサイクルを劇的に加速させます。

数百原子以上の大規模・複雑系に対応

計算コストという課題から解放されることで、これまで材料開発の現場で必要とされる時間スケールでの計算が非現実的であった大規模系へのGRRMの適用が可能になります。例えば、これまで気相中で扱っていた反応を触媒表面モデル上における反応などに置き換えた計算を実行し、より現実に近い、複雑かつ重要な現象のメカニズム解明が可能です。

未知の反応経路を発見

前提知識を必要とせずに高速・大規模に実施できる網羅的探索によって、従来では高い計算コストのために限定的であった探索が、より広範囲な反応座標空間で可能となります。これにより、人間の直感や過去の知見では決して到達し得なかった、全く新しい反応メカニズムや、思いもよらない機能を持つ分子構造を発見するのに役立ちます。

具体的な活用事例

GRRM20 with Matlantisは、既に様々な分野でその力を発揮し始めています。

【触媒開発】 一酸化炭素の酸化反応、水素製造触媒の素反応解析

周期境界系での反応経路探索として、白金触媒上での 1) 一酸化炭素の酸化反応、2) メチルシクロヘキサン(MCH)の脱水素反応の反応経路探索を実行しました。GRRM20 with Matlantisの有用性を示しました。

【半導体製造】ALD前駆体とSi基板との表面反応機構解析

原子層堆積法(Atomic Layer Deposition: ALD)で反応剤(前駆体)として用いられる有機金属化合物のシリコン表面上での反応解析を実施し、最安定経路を見出しました。さらに、アリル配位子が異なる前駆体についても同様の計算を行い、前駆体の定量的なデザインが可能であることを示しました。

今後も様々な分野について適用事例を追加予定です。

製品仕様

必要なソフトウェアパッケージ

GRRM20 with Matlantis をご利用いただくには以下のソフトウェアパッケージが必要です。

  • Matlantis本体
  • GRRM20 with Matlantis (GRRM20 本体)※
  • GRRM20 with Matlantis 連携パッケージ

連携パッケージは、GRRMが量子化学計算パッケージに要求するエネルギーや力などの計算を、MatlantisのPFPを用いて実行するために必要なインターフェースです。

※GRRM20 with Matlantis 本体は HPCシステムズから提供します。

価格

トライアル(1 or 3ヶ月)を受付中です。Matlantis の導入前でもすでにMatlantis をご契約済みでも、GRRM20 with Matlantis の有効性をお試しいただけます。料金やトライアルに関する詳細は、お問い合わせください。

料金プランやトライアルに関する詳細は、お問い合わせください

サポート体制

Matlantisと同様に、当社技術サポート窓口にお問い合わせください。
(必要に応じてHPCシステムズと連携して対応します)

GRRM20 with Matlantis で行える計算

ADDF法による反応経路自動探索(ADDF)

安定構造からポテンシャル面を登って反応経路を探索します。ADDF法による反応経路自動探索については以下の文献を参照ください。

AFIR法による反応経路自動探索(MC-AFIR, SC-AFIR, DS-AFIR)

原子間に人工力を掛けて反応を誘起させて反応経路を探索します。AFIR法による反応経路自動探索については AFIR-web および以下の文献を参照ください。

AFIR経路の改良(LUP, RePath)

AFIR法で得られた反応経路を最適化します。

基準振動解析(FREQ)


基準振動の振動数と基準座標を得ます。

安定構造最適化(MIN)

高精度に安定構造を最適化します。

遷移構造最適化(SADDLE)

高精度に遷移構造を最適化します。

固有反応座標追跡(IRC)

高精度にIRCを追跡します。

反応中間体解析(SCW)

2座標間の中間体(安定構造)を高精度に探索します。

2点間遷移状態探索(2PSHS)

2座標間の遷移構造を高精度に探索します。

自動再エネルギー計算(ReEnergy)

計算レベルを変えて既存構造(EQs, PTs, TSs)の1点計算を一括で行います。

自動再構造最適化(ReStruct)

計算レベルを変えて既存構造(EQs, PTs, TSs)の構造最適化を一括で行います。

Citation について

  • GRRM20 の引用については、AFIR-web の Citation of the program and related papers ページをご参照ください。(こちらのページへのアクセスにはAFIR-Webへの登録が必要です。登録手順は GRRM20 with Matlantis 本体ご購入時にHPCシステムズよりお知らせします)
  • Matlantis の引用については こちらをご覧ください。