2025.11.21
プレスリリース
材料研究開発におけるAI活用実態をMatlantisが米国にて調査
高速化への要求で進むAI活用と浮き彫りになる課題が明らかに
Matlantis社による米国研究者300人を対象とした新しい業界レポートによると、材料研究開発(R&D)はAIの活用により大きな転換点を迎えています。現在、R&Dの現場では、AIの活用が活発化し、シミュレーションワークフローのほぼ半数にAIが導入されていることが明らかになりました。その背景には既存手法の限界と高速化への強い要求があると考えられます。調査によれば、R&D部門の94%が、既存の物理ベースのシミュレーションにおいて、時間や計算リソースの不足により、プロジェクトの中止を余儀なくされています。一方で、AIツールの導入に際しては結果の信頼性(精度)やセキュリティが懸念として挙げられました。
Matlantis株式会社(代表取締役社長:岡野原大輔、以下、Matlantis)は、本日、米国全土の材料科学およびエンジニアリングの専門家300人を対象とした調査に基づいた新しい調査レポート『The State of AI‑Accelerated Materials R&D』の発表を行いました(レポートは英語です)。 このレポートでは、材料研究開発がAIを積極的に活用する時代に突入し、すべてのシミュレーションワークロードのほぼ半分(46%)がAIまたは機械学習の手法で実行されているという、この分野が転換点にあることを明らかにしています。
一方で、既存の物理ベースのシミュレーションに関する調査では、R&D部門の該当するチームの94%が、時間や計算リソースの不足により、過去1年間に少なくとも1つのプロジェクトを断念し、潜在的な発見が実現されないままになっていると回答しました。これは、ほぼすべての組織が計算能力の不足や遅延により、価値ある実験機会を逃していることを意味し、すなわちイノベーションにおける巨大な機会損失を示唆しています。
「有望なプロジェクトであっても実験が行われない可能性がある」と、MatlantisのCEOである岡野原は述べています。「私たちの調査によると、ほぼすべての材料研究チームが、アイデアの不足ではなく、ツールが追いつかなかったために、有望なプロジェクトを棚上げにせざるを得なかったことを示しています。これは、従来の試行錯誤の方法が、今日のイノベーションの要求ペースには遅すぎ、コストがかかりすぎるという事実を浮き彫りにしています。私たちは今、重要な発見を埋もれさせないためにも、業界全体がより迅速でスマートな手法へと舵を切るべき転換期を迎えていると考えます」
AIツールの導入において、結果の信頼性(精度)とセキュリティは依然として大きな懸念事項です。本レポートでも、この2点が最重要課題であることが強調されています。実際、AIシミュレーションによる結果の精度に対し『強い確信を持っている』と回答したのはわずか14%にとどまりました。加えて、調査対象となったすべてのチームが、外部ツールやクラウド利用時の知的財産(IP)保護に不安を抱いていることが分かりました。つまり、材料研究者はスピードと効率を熱望している一方で、テクノロジーベンダーは、『精度』と『セキュリティ』という両面でも、研究者の信頼を勝ち取る必要があるのです。

今回の調査結果はMatlantisが提供する価値の必要性・緊急性を改めて裏付けるものです。クラウドネイティブなプラットフォームであるMatlantisは、科学的な精度やデータセキュリティを損なうことなく、AIによる高速シミュレーションを通じて材料探索を加速させるべく設計されました。高度なニューラルネットワークポテンシャルと実証済みの物理法則を統合することで、研究者は結果に確信を持ちながら、迅速に検証サイクルを回すことが可能になります。本レポートは、Matlantisをこの変革の中心に位置づけ、AIシミュレーションがいかにして「研究者の野心」と「現在の技術的限界」の間にあるギャップを埋めるのかを強調しています。
「Matlantisでは、この転換点を予期し、精度やセキュリティを犠牲にすることなく、加速と効率を提供するようにプラットフォームを設計しました」と岡野原は述べています。「当社のAI技術により、研究者の皆様は数ヶ月かかっていた高精度のシミュレーションをわずか数時間で実行でき、その結果を信頼して研究を進めることができます。各企業や研究機関で研究開発に挑む皆様が持続可能なバッテリー、触媒、半導体などを開発するために日々努力されているなか、Matlantisは、有望なプロジェクトを途中で断念させるのではなく、ブレークスルーを生む結果へ導けるよう支援したいのです」
『Accelerating Discovery: AI Trends in Materials R&D』レポートのフルバージョンは、Matlantisのウェブサイトからダウンロードできます。現在のR&Dの実践における進歩と課題の両方に光を当てることで、Matlantisは、科学の発見が世界の課題や新たな可能性にしっかりと応えていけるよう、産学のパートナーと連携し、この進化を共に歩んでまいります。
※本発表は、2025年11月20日に米国にて発表したリリースをベースにした日本語ローカライズ版になります。レポートの日本語版は、準備でき次第、公開をお知らせします。
Matlantis株式会社について
Matlantisは、革新的な材料・素材の創出を通じて持続可能な世界の実現を目指し、2021年に株式会社Preferred NetworksとENEOS株式会社の合弁会社として株式会社Preferred Computational Chemistryとして設立されました(2025年7月よりMatlantisへ社名変更)。
提供する汎用原子レベルシミュレータMatlantisは、材料特性の原子レベルでの現象解明や新素材開発を実現するためのクラウドサービスです。従来の原子シミュレータに機械学習原子間ポテンシャルを組み込むことで、計算スピードを従来の数万倍に高速化し、幅広い物質への適用を可能にしました。
現在、日本国内を中心に150以上の企業や大学などの研究機関で利用されており、2023年からは海外展開も開始し、マサチューセッツ工科大学(米国)や現代自動車(韓国)などへの導入も進んでいます。 https://matlantis.com/ja
本件に関するお問い合わせ先
Matlantis株式会社
広報担当:堀野 pr@jp-matlantis.com
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