PFCC、Matlantisの新機能 LightPFPを正式販売開始
~原子数が現状の10倍以上の大規模なシミュレーションが可能に~
株式会社Preferred Computational Chemistry(代表取締役社長:岡野原大輔、以下、PFCC)は、 株式会社Preferred Networks(以下PFN)とENEOS株式会社(以下、ENEOS)が共同開発した材料探索用汎用原子レベルシミュレータMatlantis™の新機能LightPFPの販売を正式に開始しました。
Matlantisのコア技術であるPFP*1は、物質を限定せずに分子動力学シミュレーションを行うことのできる汎用機械学習ポテンシャルと呼ばれる技術です。特にPFPは物質ごとのファインチューニングを必要とせず、あらゆる計算対象を単一のモデルで扱うことのできる強力な汎用性を特徴としています。一方で、複雑な現象を、より現実に近い形で再現するために、さらに大規模な計算を行いたいという需要も存在していました。
LightPFPは、このような計算を行うために開発された機能です。計算対象の材料を限定し、PFPを教師として軽量な機械学習ポテンシャルを学習することで、PFPと比較して計算可能原子数が10倍以上、数十万原子の分子動力学計算を可能とします。通常、物質特化型の機械学習ポテンシャルの適用には教師データ作成のために大量の量子化学計算を行う必要があり、ポテンシャルの学習そのものに大きな負担がかかっていました。教師データとしてPFPを使うことで、教師データの構築や推論結果の検証を大幅に短縮することが可能となります。
現実世界で研究対象となる物質は完全結晶ではない複雑な構造であることも多く、また考察対象は、しばしば表面や界面などのスケールの大きい領域となります。LightPFPの活用により、バッテリー、半導体、ガラス、ポリマーなどの様々な材料分野において材料探索を加速させることが期待されます。

株式会社Preferred Computational Chemistryについて
PFCCは、革新的な材料・素材の創出を通じて持続可能な世界の実現を目指す企業として、2021年に
株式会社Preferred NetworksとENEOS株式会社の合弁会社として設立されました。
PFCCが提供する汎用原子レベルシミュレータMatlantisは、材料特性の原子レベルでの現象解明や新素材開発を実現するためのクラウドサービスです。従来の原子シミュレータにNeural Network Potential(NNP)と呼ばれる深層学習モデルを組み込むことで、計算スピードを従来の数万倍に高速化し、幅広い物質への適用を可能にしました。この革新的な技術は、Preferred NetworksのAI技術と計算機インフラ、およびENEOSの化学領域における専門知識とノウハウを組み合わせることで実現しました。
マテリアルズ・インフォマティクスのコアツールとして開発されたMatlantisは、合成燃料用触媒、次世代電池、排ガス触媒、摩擦損失低減潤滑油、半導体など、持続可能な社会の実現に不可欠な新素材開発に活用されています。現在、日本国内を中心に100*2以上の企業や大学などの研究機関で利用されており、2023年からは海外展開も開始し、マサチューセッツ工科大学(米国)や現代自動車(韓国)などへの導入も進んでいます。
*1: :PFP (PreFerred Potential)とは、PFNとENEOSが共同開発した、材料探索のための汎用的な原子シミュレーションを実現するMatlantisが提供する深層学習技術であるNeural Network Potential (NNP)の名称。NNPとは、ニューラルネットワークを用いて原子間ポテンシャルを表現するもの。
S. Takamoto, et al. Nat Commun 13, 2991 (2022). doi: 10.1038/s41467-022-30687-9
*2: 2024年12月現在
本社 :東京都千代田区大手町1丁目6-1大手町ビル
代表者 :代表取締役社長 岡野原大輔
創業 :2021年6月11日
資本金 :310百万円
株主 :株式会社Preferred Networks、ENEOS株式会社、三菱商事株式会社
本件に関するお問い合わせ
株式会社Preferred Computational Chemistry
広報担当:堀野 pr@pfcc.co.jp