2025年10月27日〜10月29日につくば国際会議場にて開催された「The 26th Asian Workshop」に参加し、Matlantisよりアプリケーションサイエンティストの長谷川、青木が発表いたしました。Asian workshopとは、計算物理・材料科学をテーマに1998年から開催されているワークショップで、主に東アジア各国で開催され、アジア各国のみならず世界中の研究者が集う場となっています。以下に発表内容を共有いたします。
Matlantisからの発表
1, 汎用機械学習原子間ポテンシャルとイオン電荷不均衡法を用いた、バイアス電圧下における電気化学界面のシミュレーション
発表者:テクニカルソリューション部 アプリケーションサイエンティスト 長谷川 太祐
概要:汎用の機械学習原子間ポテンシャル(MLIP)を用いて、バイアス電圧がかかった電気化学界面を記述することは挑戦的な課題です。本研究では、バイアス条件を模擬するために、液相中の陽イオンと陰イオンの組成を意図的に偏らせる「イオン電荷不均衡(ICIM)法」を提案します。この手法は、固体表面へのカウンターチャージ誘起を介して、MLIPモデルに長距離の静電相互作用を組み込むことなく電気二重層(EDL)の自発的形成を促します。汎用MLIPであるMatlantis PFPとICIM法をPt(111)/HCl水溶液に適用した結果、EDLの形成とVolmer反応の自発的な発生が観測されました。この結果は、ICI法が汎用MLIPを用いた複雑な電気化学現象のシミュレーションにおいて有効なアプローチであることを示唆しており、将来的には複数のICIモデル系を重み付き線形結合することで、電圧一定のMDの実装を目標としています。
2, 汎用機械学習ポテンシャルPFPと凸包(コンベックス・ハル)の効率的探索アルゴリズムによる結晶構造予測
発表者:テクニカルソリューション部 アプリケーションサイエンティスト 青木 祐太
概要:新規結晶構造の探索には、形成エネルギーの凸包(convex hull)の探索が必要になりますが、網羅的に探索するには膨大な計算コストが必要です。本研究では、効率的な凸包探索アルゴリズムと、汎用の機械学習ポテンシャル(PFP)による高速なエネルギー評価を組み合わせ、この探索を加速する新しいアプローチを実証します。この手法は、新規の安定構造の探索と、既存の結晶格子に対する固溶限界の決定の両方に適用可能です。新規結晶構造探索の実例として、水素を多く含む希土類水素化物(Y-H、Y-N-H系)の結晶構造を探索し、従来知られていなかった新しいY-H系安定/準安定構造の系列の存在が示唆されました。また、固溶限界決定の応用例として、強誘電体への高濃度不純物ドーピングによる「極性金属」材料の実現可能性についても調査しました。
発表当日は多くの方にお立ち寄りいただき、活発なディスカッションを行うことができました。誠にありがとうございました。
>>Matlantisによるその他の計算事例一覧はこちら
タグ